議会報告

【保健福祉委員会】中途失聴者の切実な声を受けて

3人1組での要約筆記

保健福祉委員会の新年度の研究テーマは「情報コミュニケーション」です。7月22日、難聴・中途失聴者の方とさいたま市の意見交換会について、保健福祉委員会の土橋勇司委員長より声かけがあり、委員であるとばめぐみと池田めぐみの両市議が参加しました。

 

6月11日にさいたま市手話言語条例が制定されましたが、音声言語を獲得する前に失聴したろう者だけでなく、人生の途中で聴力を失った中途失聴者や難聴者の方が感じる、日常生活の中での困難や不便についてうかがいました。「性能の良い補聴器は高額だが、5年ごとに4万円台の補助のみ。対象機種も日本製で種類も限られていることから、実態に即した補助がほしい。また、補聴器は精密機器であるため、雨や湿気に弱い。タクシーチケットの利用などができるとありがたい」などのお話がありました。

 

また、難聴・中途失聴者の方が使う手話や読話(口の動きや表情から内容を理解する)の講習会を拡充してほしいという要望のほか、中途失聴者や難聴の方は手話を取得する苦労があるため、「要約筆記者」の重要性が語られました。

 

この日は手話通訳と要約筆記の情報保障をしたうえでの懇談となりましたが、要約筆記をはじめてみた池田市議は「発言者の内容を、その場で黒マジックで透明のシートに手書きし、プロジェクターに映し出していく要約筆記者の技術と仕事量に圧倒された」と話しました。その他、区役所の窓口で上手にコミュニケーションが取れなかった体験や、学校生活で耳が聞こえないと言っていても、先生から「聞こえなかったら教えてね」と言われた経験、耳のことで病院に行くのに予約の方法が電話のみで困っているなど、切実な声が寄せられました。

 

手話通訳の経験があるとば市議は、手話を交えながら「私たちが知ることからはじまる。改善できるよう努力をしていく」と話しました。会派をこえて、市独自の補助やとりくみができるよう、市に働きかけていきます。

放課後子ども居場所事業で民間学童に影響大

2025年6月議会の子ども文教委員会に「放課後子ども居場所事業」(以下、居場所事業)の現状と、2026年度からさらに12校増やし25校で実施する計画が報告されました。

 

今年度から「居場所事業」が始まった9校のうち8校には学区内に民間学童クラブがあります。これらの学童クラブでは利用児童数が昨年度664人から今年度350人(前年度比52.7%)に激減しました。中にはほとんど減らなかった学童クラブもありましたが、もっとも減ったのが尾間木学童クラブ(緑区)の114人でした。

 

市は「居場所事業」の影響として「入室児童数の減少、それにともなうクラブの統合、クラブ統合にともなう職員の人員整理や賃借物件のクラブ室の原状回復、入室児童数減少にともなう利用料収入および市からの委託料収入の減少等があった」と認めました。それでいて「支援策は12月に議会に示す」というのはあまりに遅い対応であり、報告を受けた松村としお市議は「このまま居場所事業を進めるのは問題」と話しました。

2025年6月議会*追加補正予算 すべての市民を対象にした支援こそ

審査に参加するとばめぐみ市議

市長は議会冒頭、「市民の生活を足元からしっかりと支える」として、「家計負担軽減」を掲げましたが、6月議会終盤に追加提出された43億円超の補正予算案はまったくその言葉に見合うものではありません。18歳以下の子どもを養育する世帯に対して子ども1人につき1万円を給付する施策と、市民アプリを使った15%ポイント還元については、1面の池田めぐみ市議の本会議討論でもふれていますが、その他、学校給食費への支援が表明されたものの米価高騰分にとどまり、多くの自治体が実施している無償化には踏み込みませんでした。

 

また、農業・中小企業支援も「省エネ・省力化投資」に限定され、体力のある一部の事業者しか対象になっていません。市内には約3000戸の農家がありますが、畜産農家への飼料補助のみで、その対象はわずか12戸にとどまっています。

 

予算委員会で審査したとばめぐみ市議は「あまりにも限られた支援。生きるか死ぬかの市民の暮らしや営業の苦しみをわかっているのか。本市は国民健康保険税を9年連続で引き上げ、県内最高。水道料金も県内トップ。『家計負担軽減』を本気で掲げるのであれば、国保税や水道料金の引き下げ、給食費の無償化、光熱費や原材料費、家賃補助など、すべての市民を対象にした支援こそやるべきだ」と述べました。

市が公共施設料金の引き上げねらう

審査に参加する金子あきよ市議

2025年6月議会の総合政策委員会に「公の施設に係る使用料見直しの基本的な考え方(骨子案) 」についての報告がありました。市は、施設の維持管理費が上昇しており、公の施設の経費負担のあり方に検討が必要だとしています。つまり「受益者負担」の原則から使用料徴収の基準を明確にし、より多くの施設で使用料を取る、または引き上げることをねらっているのです。

 

現在「公の施設」として使用料等が徴収されている施設はコミュニティセンター、市民会館、体育館、プール、駐車場・駐輪場、美術館・博物館などがあります。今回の検討対象には、現在は使用料を徴収していない公民館なども含まれるとされています。

 

今後は今年度中に「基本的な考え方」を策定、来年度以降「各施設での使用料見直しに向けた検討および実施をしていく」予定と示されています。施設固有の役割や目的を考慮せず受益者負担を強調し、市民負担増を求める方向性は問題です。市民意見を踏まえた検討をおこなうよう求めていきます。

2025年6月議会*本会議討論 子育て支援は社会保障予算の拡充で

会派を代表して討論にたつ池田めぐみ市議

7月4日、6月議会最終本会議で、党市議団を代表して池田めぐみ市議が議案、請願および補正予算について、それぞれ討論しました。提出議案38件のうち、32件に賛成し、6件に反対しました。おもな反対理由は以下のとおりです。

 

はじめに、令和7年度さいたま市国民健康保険事業特別会計補正予算(第1号)について、この議案は2026年度から創設される子ども・子育て支援金制度に対応するため国民健康保険システムの改修をおこなうために約1063万円を計上しています。議案自体はシステム改修に関する費用ですが、背景にあるのは、児童手当の拡充、妊娠中、育休中の支援など「子ども・子育て支援金制度」に必要な財源を、社会保障削減と国民負担によって確保するという問題です。池田市議は「市民の望みは高すぎる国民健康保険税の引き下げなど、負担軽減だ。したがって、国に対して支援金制度の撤回を求め、子育て支援の充実は市民の負担増で進めるのではなく社会保障予算の拡充で進めるべきだ」と求めました。

 

また、公立保育所民間移管にともなう運営事業者選定委員会条例の制定議案について、池田市議は「この条例は、公立保育所を廃止および民間移管によって半減させる『公立保育所の在り方基本方針』に基づいて制定されるが、私たちはそもそも公立保育所を減らすことに反対。質疑でも、民間移管が実現しなかった場合は公募条件を緩和するという答弁があった。子どもの命を預かる現場で質を緩和することは認められない」として反対しました。

 

 

物価高騰対策

子どもひとり1万円の給付

 

 

続いて、物価高騰をうけて「家計負担軽減策」が追加補正予算として提出されました。このうち、18歳未満の子どもひとりにつき1万円を給付する特別給付金給付事業の予算は約23億円です。池田市議は「この事業自体を否定するものではないが、子どものいない世帯も多く、子育て世帯以外への支援も求められている」と主張しました。

 

また約16億円の予算がついた市民アプリ活用事業については「物価高騰対策よりも市民アプリのダウンロード数を増やすことが主目的になっていないか」と懸念を表明。「デジタル地域通貨の本来の目的は、地域経済を活性化させることだが、市民が大きくポイント還元を受け取るため、大規模店舗に利用が集中したという声が寄せられている。そもそもマイナンバーカードと紐づけなければ市民アプリは利用できない」と主張しました。現在、アプリのダウンロード数は約19万3000とのことですが、市内のアクティブユーザーは約10万人で、支援の対象人数が全市民を網羅しているとは言えません。池田市議は「私たちは、水道料金の引き下げなど、全市民を対象にした対策こそ必要と考える」として、本議案に反対しました。

 

 

所得税法第56条を廃止して

 

 

「所得税法第 56 条(以下、56条)を廃止するよう国や政府機関に意見書を上げること」の請願について、池田市議は「56条は、中小業者を支えている家族従業者(多くが女性)が働いた分、すなわち自家労賃は原則として必要経費とすることを認めていない。そのため事業専従者は、自立に必要な所得を得ることができないという経済的差別を受けている。国連女性差別撤廃委員会は、2016年に続いて2024 年にも『事業主のおよそ8割が男性であり、56条が家族従業女性の経済的自立を妨げていること』を懸念し、その改正を日本政府に勧告した」と主張し、「これまでも同趣旨の請願が出されており、全国の税理士会なども56条の廃止を求める意見書をあげている。地方議員が見直しの必要性を国に訴えるのは当然の責務」として、請願の採択を求めました。

 

最後に、請願「3000人規模の義務教育学校『武蔵浦和学園』建設計画の見直しを求めます」について池田市議は、入札が2度にわたって不調になり、このままでは設計金額が膨れ上がってしまうこと、大きく複雑な校舎ユニット制などの実験的なシステムによる教員や子どもへの負担、学区編成の硬直化などの問題が解決していないことを指摘し、「現状の大規模・過大規模校解決のために、さらに『超巨大規模校』をつくるという考え方には無理がある。本請願に緊急で寄せられた署名も1540筆となった。立ち止まって見直すべき」として、採択を求めました。

 

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