政策と活動

視察

「学校3部制」を視察 ~奈良県天理市~

 

人口減少・少子高齢化・財政難・施設の老朽化が進むなか、政府は2014年以降、全国の自治体に「公共施設等総合管理計画」の策定を求め、施設の総量縮減と長寿命化・効率化を促すとともに、PFI(民間資金活用)やPPP(官民連携)の活用も推進しています。小学校、中学校及び高校の統廃合が加速し、2002年以降、全国で約8580校が廃校となりました。

 

そうしたなか、党市議団は、奈良県天理市(人口約6万人・小学校9校・中学校4校)が学校の統廃合を避けるために導入した「学校3部制」に注目し、7月29日にとばめぐみ、金子あきよの両市議が視察しました。

 

この制度は、学校を統廃合しないことを掲げ、学校を地域の拠点と位置づけ、第1部「通常授業」、第2部「学童保育・アフタースクール」、第3部「公民館活動・多世代交流」の3部構成としたしくみです。2024年度から市内全小学校で全面導入し、2025年度には山の辺小学校・柳本小学校の老朽化校舎建替えで、3部制に対応した新校舎整備が開始される予定です。

 

学校教育を「第1部」に特化することで教員が授業に集中できる体制を整備し、過重労働の緩和をめざし、2024年度には教員退職・休職者数が激減したという成果も報告されました。

 

建替えは、設計・発注支援・プロポーザル支援などをコンサルティング会社に委託し、「従来の鉄筋コンクリートではなく、規格品、既製品での建設も視野に入れている」との説明でした。「統廃合回避、小学校を減らさない」「教職員の負担軽減」という効果に注目しましたが、残念ながら実態は、義務教育・学童保育・社会教育それぞれの専門性を軽視した「連携」「統合」であり、「公共施設面積の縮減」という大目標が最優先されていることがあきらかになりました。

 

とば市議は「子ども・教員・地域住民のねがいから出発していないことは残念だ。天理市は、コスト削減のための企業の提案について、地域住民に対して説明会を開いて説得してきた。学校を統廃合しないかわりに、公民館は学校に吸収され、平日昼間の活動は縮減されることになってしまった。得をするのはコンサル会社であり、公共政策や施設整備で何より重視すべき住民の最善の利益は二の次になっていた」と厳しく指摘しました。

特集:今かんがえる子どもの放課後 子どもたちが豊かに過ごす放課後とは

視察した市内の放課後児童クラブ

小学生の放課後の過ごし方は多種多様です。なかでも、保護者の就労などにより、下校しても家におとながいない子どもたちのために、安全で豊かな放課後を保障するための学童保育のニーズは高まっています。

 

これらは平成初期まで自治体や地域団体が運営し、名称も「学童保育」や「学童クラブ」などバラバラでしたが、1997年に児童福祉法が改正され、「放課後児童健全育成事業」として制度が整い、「放課後児童クラブ」という名称が、法律上の正式名称とされました。「学童」を「保育」をする場が「放課後」に「児童」が集まる「クラブ(共通の目的や趣味を持つ人々が集まる団体)」に置き換えられてきたわけです。さらに現在、本市がモデル事業を展開している「放課後子ども居場所事業」は子どもに居場所を提供する事業であり、学童を保育する場ではありません。

 

 

放課後子ども居場所事業の問題点は

 

党市議団はこれまでも「放課後子ども居場所事業」の実施そのものの問題点を指摘してきました。学童保育は「ただいま」と帰る場所であり、ここで過ごす時間は、遊びや生活を通して「豊かな体験や学び」「仲間や、信頼できる大人との人間関係づくり」を継続的に積み上げ、子どもの成長を促す時間です。放課後子ども居場所事業のように、日によって来る子どもが違い、来ても来なくてもよく、安全な居場所を提供すればいいというだけでは、豊かな人間関係はつくれません。

 

本市の放課後児童クラブの待機児童が多い問題は、放課後児童クラブと学童保育の充実で乗り越えるべきです。「放課後子ども居場所事業」への置き換えは、子どもの育ちにまったく配慮しない、問題のすり替えでしかありません。「放課後子ども居場所事業」が広がることで、結果的に、公設放課後児童クラブを廃止し、民設の学童保育・学童クラブに存続の不安を与えています。また、学童保育が「放課後子ども居場所事業がつまらない」と言って登録をやめた子どもの受け皿になっているケースもあります。

 

党市議団は、子どもたちに豊かな放課後を保障するために、本市が国の委託金や助成金のすべてを活用して放課後児童クラブと学童保育の充実をはかることを強く求めていきます。

 

 

公設放課後児童クラブを視察

 

 

党市議団に「放課後児童クラブに入室を希望したが入れなかった」「利用している放課後児童クラブの施設が狭すぎる」などの声が複数寄せられています。そこで実態を把握するために、6月4、5、6日の3日間、本太(浦和区)、大門(緑区)、大谷口(南区)の3クラブ室を池田めぐみ、松村としお、とばめぐみ、金子あきよの各市議が分担して視察しました。

 

それぞれのクラブ室では、子どもたちが机に向かって宿題をしたり、好きな本を読んだり、絵をかいたり、ゲームに興じていました。また校庭での自由遊び、室内でのドッジボールなど、弾けるように体を動かす子どもたちの姿があり、ここでの活動が楽しいものであることがうかがわれました。クラブ室では子どもたちは大好きなおやつを食べます。その様子は笑顔いっぱいでとてもうれしそう。当番活動、準備や後片づけなど多くのことを学ぶ機会でもあります。おやつは子どもたちにとって大切な「活動」であることがわかりました。

 

一方で、課題も見受けられました。どのクラブでも、入室の希望が定員を大幅に上回っているため、優先度の高い1年生の人数が圧倒的に多くなります。そのため、上の学年の子どもが下の学年の子どもと活動する機会が少なく、支援員が面倒を見ないといけない場面がほとんどです。これでは活動の内容を支援することに力を注ぐのがむずかしくなります。89人が入室している大門クラブでは、支援員が名簿を手にしながら子どもの点呼に追われている実態がありました。

 

視察した金子市議は、「保護者・市民から強く望まれている放課後児童クラブの拡充が必要。対策を求めたい」と話しました。

 

放課後子ども居場所事業で民設学童の運営が不安定に

 

 

5月25日、プラザウエストで、さいたま市学童保育連絡協議会の定期総会が開かれ、久保みき、とばめぐみ、池田めぐみの各市議が参加しました。冒頭、西栄一郎会長から、市連協が提出した「常勤職員2名以上配置した際の適用条件見直しを求める請願書」が2月議会で国に対する意見書として採択されたことについて感謝のあいさつがありました。

 

一方で、さいたま市の学童保育は、公設62カ所、民設263カ所(2025年4月現在)で、民設に依存してきた経緯がありますが、昨年度から「放課後子ども居場所事業」が始まったことで、民設学童への影響を心配する声が多く寄せられました。総会では、放課後子ども居場所事業がはじまった岸町小学校の民設学童クラブ「太陽の家」の指導員と保護者からそれぞれ発言があり、「専門性のある指導員がいるからこそ、貴重な体験ができる」「5、6年生がリーダーとして活躍し、異年齢のかかわりがあることで、子ども同士の育ちあいの場所になっている」など、居場所事業ではなく、あえて民設を選んでいる理由などが語られました。

 

また、鈴谷小学校区の民設放課後児童クラブ「シリウス」の保護者からは、居場所事業の影響で、児童数と委託金が減少した現状が報告されました。

 

総会では、各区の市議が区ごとに学童の保護者や指導員と話す機会が設けられ、池田市議は「子どもたちが安心して過ごせる第二の居場所として、放課後のあり方について現場の声を聞き、市議会に届けたい」と話しました。

川西市・子どもの人権オンブズパーソン 子どもの権利条約の実践を視察

京都市立洛風中学校の廊下の様子。木のぬくもりが伝わる

5月19日、1999年に日本で最初の子どものための独立した権利擁護機関を設置した兵庫県川西市「子どもの人権オンブズパーソン」を、党市議団から、とばめぐみ、たけこし連、池田めぐみの各市議が視察しました。

 

1990年代、学校でのいじめの広がりに心を痛めた川西市は、調査実施に踏み出しました。クラスで1~2人が死を考えるほどのいじめを経験していることが判明し、「子どもを助けたい」と、1998年12月、市の条例で「子どもの人権オンブズパーソン」を制定。「子どもの話を親身になって聴くこと」をもっとも大切にし「子どもの意見表明権の保障」を通じて「子どもの最善の利益を確保する」という、子どもの権利条約の実践活動がはじまります。弁護士や研究者等のオンブズパーソン3人、調査相談員4人、弁護士、研究者、心理士等の調査相談専門員11人という手厚い体制で、年間3400万円の予算を確保しています。

 

事務局からは「子どもが救済されるには、善意のおとなの存在だけでは無理。自分が問題解決の主人公であると実感できたとき、子どもの権利回復はより積極的にすすむ」「子どもの救済を〝法的権利、請求権、保障、公正、平等、自由〟という視点からとらえ、子どもの最善の利益は、子どもの気持ち・意見を聴くことで具体化される」「子どもの声をしっかり聴いてくれるおとなを増やすことが課題」等、経過や理念、実践等の説明がありました。毎年、市内の小学3年生は市役所見学の際にオンブズの事務局を訪れ、小学生の8割がオンブズの存在を知っており、中学生の職業体験でも役所を訪れる際にはオンブズの活動にも参加。「相談」が子どもたちの身近なものになっています。

 

ひとりの子どもの相談に相談員が耳を傾ける様子や、オンブズパーソンや専門家を交えた数人でのケース会議が動画を通して紹介され、とば市議は「とことん子どもに寄り添っている。オンブズによって個人的な問題を社会的な課題へと押しあげられ、子どもも社会も成長させている。さいたま市でもぜひ提案したい」と感想を述べました。

 

 

京都市立洛風中学校を視察

子どもを真ん中にした居場所づくり

 

 

続いて、京都市にある不登校児童生徒を対象とした特別学校「京都市立洛風中学校」(2004年開校)を視察しました。

 

洛風中学校の2025年度の生徒数は45名(1年生7名、2年生14名、3年生24名)、生徒は「ウィング」という名前の縦割りの生活グループに所属していて、異年齢の仲間と交流しながら成長します。全体の教員数は20名ほど。担任は、ひとつのウィングに3人という手厚さです。洛風中学校の教育では、徹底的に親身に関わってくれる大人との出会いを大切にしていますが、「困りに寄り添うが、困るまで待つ、困るまで手を出さない」のもポイントと、芦田美香校長は懇談のなかで話していました。

 

洛風学校は、中学校の旧校舎を改築し使っていますが、木の机や椅子、木の表札やロッカーなど、木のぬくもりや、風通しのよさを重視しています。年間総授業数も770時間で、一般的な学校の7割程度。昼食休憩時間も1時間10分確保し、ゆっくり過ごすことができます。

 

一方で、さいたま市は「学びの多様化学校」を2026年4月に開校予定ですが、担任はおらず、授業はひとりひとりがオンラインで受け、登校があるときも給食は実施せず、子どもたちは校庭も体育館もない施設に通う予定です。

 

池田市議は、「さいたま市の学びの多様化学校は、教育研究所内や教育相談室内に設けるため校舎はなく、通いたくなければメタバース(インターネット上の3次元の仮想空間)を活用してくださいというスタンス。不登校児童生徒を迎え入れるための居場所づくりは、京都市立洛風中学校のように子どもを真ん中にして考えるべき」と話しました。党市議団では、引き続き、市内の不登校児童生徒はもちろん、一般的な学校に通いながらもつらい思いをしている子どもたちも守る立場で、論戦していきます。

画期的な戸別収集で課題解決へ ごみ問題で藤沢市を視察  

職員から話を聞く(左から)久保みき市議、金子あきよ市議

7月25日、金子あきよ、久保みきの両市議は、ごみの戸別収集をおこなっている神奈川県藤沢市を視察しました。

 

燃えるごみの集積所では、ネットをかぶせてもカラス等による被害が深刻で、それを清掃する住民の負担の大きいのが実情です。分別がされず出されたごみは収集されず、シールが貼られ、いつまでもその場に残っていることもあります。そのため、ごみ警察ならぬ住民が監視しているような状況も発生しています。高齢化で集積所まで出しに行くのが大変など、さまざまな課題があります。このような課題解決のため、藤沢市では戸別収集を2007年から実施しています。実施した当初、ご高齢の方から泣いて喜ばれたそうです。いかにごみ出しが大変だったか分かります。戸別収集は、各家の前にコンテナやバケツに入れて出されるので、カラス被害はゼロです。

 

藤沢市では、可燃ごみのほか、ビン、カン、ペットボトル、本、廃食油を戸別収集しています。車両を改造して、併せ収集を実施し、一度に2品目以上収集することで時間と経費を削減しています。また、分別の徹底でごみの減量に成功しています。2012年から商品プラスチック(バケツ、洗面器、タッパーなど)を資源化しているのも画期的です。これらの商品プラスチックを原料に公園のベンチをつくるなど、リサイクルの地産地消をおこなっています。また、タンスなどの大型ごみにおいては、宅内から出すことが困難な高齢者、障がい者世帯などに対し持ち出しのサービス(福祉大型ごみ事業)を実施しています。

 

視察した久保市議は「きめ細やかなごみ行政を学べて、とても有意義な視察だった。さいたま市政にも生かしたい」と話しました。

男女共同参画を前へ 「らら京都」と「京あんしんこども館」を視察

さいたま市議会の女性活躍推進議員連盟では、男女共同参画の先進事例を学ぶため、横浜市、仙台市に続き、京都府の男女共同参画センター「らら京都」を視察しました。党市議団からとばめぐみ、池田めぐみ両市議が参加しました。

 

京都のとりくみでは、「女性の悩み相談」事業に力を入れているほか、女性の起業支援のための全5回で開催する創業スクールが大人気。スクールだけで終わらせず、起業後のスキルアップをサポートする交流サロンや、チャレンジオフィスの提供、地域で活躍する人を紹介するラジオ番組「“京”do参画」など、フォローアップが充実しているのが特徴です。また、防災に女性の視点を取り入れ、災害時の女性相談サポーター養成講座を複数回実施しているほか、「きょうとみんなの防災カード」を男女共同参画の視点で作成し、今回の視察でも、ワークショップというかたちで災害の備えや避難所について議員同士で話し合いました。

 

「京(みやこ)あんしんこども館」では、長村敏生センター長と懇談しました。自身の小児科医としての経験から、子どもの大きな死亡原因のひとつ「不慮の事故死」を減らすため、京都第二赤十字病院と京都市が連携し「子ども保健医療相談・事故防止センター」を創設したとのことです。また、館内の子どもセーフティハウスを看護師の説明を受けながら回ることで、子どもにとっての家の中の危険をリアルに体験することができました。「さいたま市でもこのようなとりくみを実現したい」と、とば、池田の両市議は話しました。

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