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特集:今かんがえる子どもの放課後 子どもたちが豊かに過ごす放課後とは

視察した市内の放課後児童クラブ

小学生の放課後の過ごし方は多種多様です。なかでも、保護者の就労などにより、下校しても家におとながいない子どもたちのために、安全で豊かな放課後を保障するための学童保育のニーズは高まっています。

 

これらは平成初期まで自治体や地域団体が運営し、名称も「学童保育」や「学童クラブ」などバラバラでしたが、1997年に児童福祉法が改正され、「放課後児童健全育成事業」として制度が整い、「放課後児童クラブ」という名称が、法律上の正式名称とされました。「学童」を「保育」をする場が「放課後」に「児童」が集まる「クラブ(共通の目的や趣味を持つ人々が集まる団体)」に置き換えられてきたわけです。さらに現在、本市がモデル事業を展開している「放課後子ども居場所事業」は子どもに居場所を提供する事業であり、学童を保育する場ではありません。

 

 

放課後子ども居場所事業の問題点は

 

党市議団はこれまでも「放課後子ども居場所事業」の実施そのものの問題点を指摘してきました。学童保育は「ただいま」と帰る場所であり、ここで過ごす時間は、遊びや生活を通して「豊かな体験や学び」「仲間や、信頼できる大人との人間関係づくり」を継続的に積み上げ、子どもの成長を促す時間です。放課後子ども居場所事業のように、日によって来る子どもが違い、来ても来なくてもよく、安全な居場所を提供すればいいというだけでは、豊かな人間関係はつくれません。

 

本市の放課後児童クラブの待機児童が多い問題は、放課後児童クラブと学童保育の充実で乗り越えるべきです。「放課後子ども居場所事業」への置き換えは、子どもの育ちにまったく配慮しない、問題のすり替えでしかありません。「放課後子ども居場所事業」が広がることで、結果的に、公設放課後児童クラブを廃止し、民設の学童保育・学童クラブに存続の不安を与えています。また、学童保育が「放課後子ども居場所事業がつまらない」と言って登録をやめた子どもの受け皿になっているケースもあります。

 

党市議団は、子どもたちに豊かな放課後を保障するために、本市が国の委託金や助成金のすべてを活用して放課後児童クラブと学童保育の充実をはかることを強く求めていきます。

 

 

公設放課後児童クラブを視察

 

 

党市議団に「放課後児童クラブに入室を希望したが入れなかった」「利用している放課後児童クラブの施設が狭すぎる」などの声が複数寄せられています。そこで実態を把握するために、6月4、5、6日の3日間、本太(浦和区)、大門(緑区)、大谷口(南区)の3クラブ室を池田めぐみ、松村としお、とばめぐみ、金子あきよの各市議が分担して視察しました。

 

それぞれのクラブ室では、子どもたちが机に向かって宿題をしたり、好きな本を読んだり、絵をかいたり、ゲームに興じていました。また校庭での自由遊び、室内でのドッジボールなど、弾けるように体を動かす子どもたちの姿があり、ここでの活動が楽しいものであることがうかがわれました。クラブ室では子どもたちは大好きなおやつを食べます。その様子は笑顔いっぱいでとてもうれしそう。当番活動、準備や後片づけなど多くのことを学ぶ機会でもあります。おやつは子どもたちにとって大切な「活動」であることがわかりました。

 

一方で、課題も見受けられました。どのクラブでも、入室の希望が定員を大幅に上回っているため、優先度の高い1年生の人数が圧倒的に多くなります。そのため、上の学年の子どもが下の学年の子どもと活動する機会が少なく、支援員が面倒を見ないといけない場面がほとんどです。これでは活動の内容を支援することに力を注ぐのがむずかしくなります。89人が入室している大門クラブでは、支援員が名簿を手にしながら子どもの点呼に追われている実態がありました。

 

視察した金子市議は、「保護者・市民から強く望まれている放課後児童クラブの拡充が必要。対策を求めたい」と話しました。

 

放課後子ども居場所事業で民設学童の運営が不安定に

 

 

5月25日、プラザウエストで、さいたま市学童保育連絡協議会の定期総会が開かれ、久保みき、とばめぐみ、池田めぐみの各市議が参加しました。冒頭、西栄一郎会長から、市連協が提出した「常勤職員2名以上配置した際の適用条件見直しを求める請願書」が2月議会で国に対する意見書として採択されたことについて感謝のあいさつがありました。

 

一方で、さいたま市の学童保育は、公設62カ所、民設263カ所(2025年4月現在)で、民設に依存してきた経緯がありますが、昨年度から「放課後子ども居場所事業」が始まったことで、民設学童への影響を心配する声が多く寄せられました。総会では、放課後子ども居場所事業がはじまった岸町小学校の民設学童クラブ「太陽の家」の指導員と保護者からそれぞれ発言があり、「専門性のある指導員がいるからこそ、貴重な体験ができる」「5、6年生がリーダーとして活躍し、異年齢のかかわりがあることで、子ども同士の育ちあいの場所になっている」など、居場所事業ではなく、あえて民設を選んでいる理由などが語られました。

 

また、鈴谷小学校区の民設放課後児童クラブ「シリウス」の保護者からは、居場所事業の影響で、児童数と委託金が減少した現状が報告されました。

 

総会では、各区の市議が区ごとに学童の保護者や指導員と話す機会が設けられ、池田市議は「子どもたちが安心して過ごせる第二の居場所として、放課後のあり方について現場の声を聞き、市議会に届けたい」と話しました。

川西市・子どもの人権オンブズパーソン 子どもの権利条約の実践を視察

京都市立洛風中学校の廊下の様子。木のぬくもりが伝わる

5月19日、1999年に日本で最初の子どものための独立した権利擁護機関を設置した兵庫県川西市「子どもの人権オンブズパーソン」を、党市議団から、とばめぐみ、たけこし連、池田めぐみの各市議が視察しました。

 

1990年代、学校でのいじめの広がりに心を痛めた川西市は、調査実施に踏み出しました。クラスで1~2人が死を考えるほどのいじめを経験していることが判明し、「子どもを助けたい」と、1998年12月、市の条例で「子どもの人権オンブズパーソン」を制定。「子どもの話を親身になって聴くこと」をもっとも大切にし「子どもの意見表明権の保障」を通じて「子どもの最善の利益を確保する」という、子どもの権利条約の実践活動がはじまります。弁護士や研究者等のオンブズパーソン3人、調査相談員4人、弁護士、研究者、心理士等の調査相談専門員11人という手厚い体制で、年間3400万円の予算を確保しています。

 

事務局からは「子どもが救済されるには、善意のおとなの存在だけでは無理。自分が問題解決の主人公であると実感できたとき、子どもの権利回復はより積極的にすすむ」「子どもの救済を〝法的権利、請求権、保障、公正、平等、自由〟という視点からとらえ、子どもの最善の利益は、子どもの気持ち・意見を聴くことで具体化される」「子どもの声をしっかり聴いてくれるおとなを増やすことが課題」等、経過や理念、実践等の説明がありました。毎年、市内の小学3年生は市役所見学の際にオンブズの事務局を訪れ、小学生の8割がオンブズの存在を知っており、中学生の職業体験でも役所を訪れる際にはオンブズの活動にも参加。「相談」が子どもたちの身近なものになっています。

 

ひとりの子どもの相談に相談員が耳を傾ける様子や、オンブズパーソンや専門家を交えた数人でのケース会議が動画を通して紹介され、とば市議は「とことん子どもに寄り添っている。オンブズによって個人的な問題を社会的な課題へと押しあげられ、子どもも社会も成長させている。さいたま市でもぜひ提案したい」と感想を述べました。

 

 

京都市立洛風中学校を視察

子どもを真ん中にした居場所づくり

 

 

続いて、京都市にある不登校児童生徒を対象とした特別学校「京都市立洛風中学校」(2004年開校)を視察しました。

 

洛風中学校の2025年度の生徒数は45名(1年生7名、2年生14名、3年生24名)、生徒は「ウィング」という名前の縦割りの生活グループに所属していて、異年齢の仲間と交流しながら成長します。全体の教員数は20名ほど。担任は、ひとつのウィングに3人という手厚さです。洛風中学校の教育では、徹底的に親身に関わってくれる大人との出会いを大切にしていますが、「困りに寄り添うが、困るまで待つ、困るまで手を出さない」のもポイントと、芦田美香校長は懇談のなかで話していました。

 

洛風学校は、中学校の旧校舎を改築し使っていますが、木の机や椅子、木の表札やロッカーなど、木のぬくもりや、風通しのよさを重視しています。年間総授業数も770時間で、一般的な学校の7割程度。昼食休憩時間も1時間10分確保し、ゆっくり過ごすことができます。

 

一方で、さいたま市は「学びの多様化学校」を2026年4月に開校予定ですが、担任はおらず、授業はひとりひとりがオンラインで受け、登校があるときも給食は実施せず、子どもたちは校庭も体育館もない施設に通う予定です。

 

池田市議は、「さいたま市の学びの多様化学校は、教育研究所内や教育相談室内に設けるため校舎はなく、通いたくなければメタバース(インターネット上の3次元の仮想空間)を活用してくださいというスタンス。不登校児童生徒を迎え入れるための居場所づくりは、京都市立洛風中学校のように子どもを真ん中にして考えるべき」と話しました。党市議団では、引き続き、市内の不登校児童生徒はもちろん、一般的な学校に通いながらもつらい思いをしている子どもたちも守る立場で、論戦していきます。

進む「産業集積拠点」整備事業 その問題点は?

緑区浦和IC付近に建てられた産業集積拠点

これまで、さいたま市が市内の高速道路や幹線道路の沿線を中心に、工場、物流施設、研究開発施設などの企業誘致の「受け皿」とする「産業集積拠点」の整備事業を進めていることについてお知らせしてきました(市議団ニュースNo.1024)。2018年までに選定した候補地区のうち、①の浦和I C西側地区では、大型物流センターが建設され、今年8月からの稼働が予定されています(写真)。2024年11月に、さらに⑦~⑩の4カ所の候補地が追加されました。担当する産業展開推進課は「企業の立地ニーズは非常に高く、切れ目なく整備を推進していく」として候補地を追加、10カ所に増やしたと予算委員会で説明しています。これまでに市の予算を4億円もかけて調査などをおこないながら事業を進めており、企業誘致に前のめりです。

 

 

④の宮前地区については、3月18日の都市計画審議会で、土地区画整理事業の変更などが決定されました。この審議会に委員として参加した金子あきよ市議は、都市計画法上の手続きとしておこなわれた公聴会、計画案縦覧に対する意見書のなかで、少なくない住民から懸念や計画に反対する意見が示されていたことから、近隣住民にとっての居住環境が企業活動によって甚大な影響を受ける可能性について指摘。計画変更には同意できないと態度表明しました。計画変更に賛成した他の委員からも「企業活動による住空間への影響を緩衝するしくみを考えるべきではないか」「緑地保全や住民意見の尊重に配慮した進め方をするべきだ」との発言がありました。

 

 

金子市議は「産業集積拠点整備は多くの場合、市の貴重な緑地、自然環境を犠牲にして進められる。地権者だけでなく、近隣住民に対する説明と合意形成が求められる。今後の事業の進捗に際して、住民にとっての不利益が生じないか、注視していきたい」と話しました。

さいたま市の学校を語る座談会① 子どもの視点はどこへ

さいたま市では、義務教育学校建設(南区)をはじめ、大規模マンション「シントシティ」(大宮区)による小学校の過大規模化、大和田地区にできる新設校(見沼区)などの課題が目白押しです。この問題を議会でとりあげてきた市議が語りました。

 

とば 武蔵浦和の義務教育学校の現状はどうですか?

 

金子 開校準備室が10月に立ち上がり、2028年度開校をめざしています。学校規模は当初3700人の計画が3082人に縮小されたものの、大規模です。この学校は3つの校舎に分かれ、1~4年生と5~9年生を別々に教育する計画です。しかし2月の入札は不調に終わりました。当初133億円だった予算が220億円まで膨らみましたが、それでも請け負う業者がいません。このままだと資材の質や工期に影響が出て、安全性に問題が生じる恐れがあるため、地元のみなさんとともに計画中止を求めて声を上げています。

 

とば 背景には、マンション建設を許可しながら学校を増やさず、小学校がパンク状態になった問題がありますね。「シントシティ」の状況はどうですか?

 

池田 「シントシティ」は1411戸の巨大マンションで、学区は大宮南小学校ですが、子どもたちの受け入れが困難になっています。このままでは2030年に生徒数1703人、54クラスという状況になります。そこで上木崎小学校(浦和区)への通学も選択できる計画が決まりました。しかし上木崎小学校も2030年には1271人、42クラスに膨れ上がります。対策として校庭にプレハブ校舎を建て、子どもたちの遊び場である築山を解体するという説明があり、保護者は驚いています。さらに隣接するJR住宅の改築情報もあり、その場合はプールを壊して2つ目のプレハブ校舎を建てる計画です。さいたま市が子どもの増加を見越した計画を持っていなかった責任は大きいと思います。

 

金子 「シントシティ」建設中から、私たち市議団は子育て施設が足りなくなると本会議で質問していましたが、教育委員会は「大丈夫」と言い張っていました。

 

池田 浦和駅西口再開発でも「高砂小学校の児童がどれくらい増えるのか」と質問しましたが、「局が違うので答えられない」とのこと。都市局と教育委員会の連携が見えません。

 

とば 一方、大宮小学校の件では開発をすすめる側として連携しているようですね。

 

金子 大宮小学校の問題は、大宮駅のグランドセントラルステーション化構想の中で、駅周辺に車を入れないための隔地駐車場を大宮区役所跡地と大宮小学校を一体開発してつくろうとしていることです。「駅前賑わい拠点」として整備する計画が進んでいます。

 

とば 150年の歴史があり、地域の祭りやコミュニティの中心でもある大宮小学校。現在の土地と緑を残して、との声が多く上がっていますが、市は聞く耳を持ちませんね。

 

池田 駐車場と小学校をセットにするイメージがまったくわかないという声を多く聞きます。子どもたちの教育環境より開発が優先されているようです。

 

 

教室がなくなる?

 

 

金子 文科省は「学校の地域に対する役割」を強調し、学校本来の役割を変質させようとしている面があります。武蔵浦和学園では「地域交流エリア」として音楽スタジオやキッチン、図工アトリエなどを設け、「地域の大人にとっても魅力的な学習空間」として地域住民も使えるようにするそうです。

 

とば 2026年4月開校予定の大和田小学校でも「どこでも教室」という概念が導入されています。この学校は、文科省の「未来の学校」構想による設計変更で開校が1年遅れました。従来の「廊下と教室」という区分をなくし、パーテーションで自由に変形できる空間にするそうです。

 

金子 武蔵浦和義務教育学校も同様の設計で、最初は可動性のパネルだけでしたが、音漏れの問題で遮音性の高いパーテーションを追加し、コストが上がりました。

 

池田 これは1人1台タブレット教育とも連動していると思います。授業中はそれぞれ黙々とタブレットに向かっている状態で、コミュニケーション能力が育つか不安です。

 

金子 「個別最適化」の名のもとに、自分のいたいところでタブレットを開いて勉強する環境を推進しています。しかし、それが本当に子どもの育ちにとってよいのでしょうか。

 

池田 タブレット学習では、音楽の授業でも音が出ず、図工でも実際に絵を描くことの価値を疑い、「絵を描くことの当たり前を疑いましょう」と言って、写真を撮るだけの授業もあるそうです。

 

とば 触れる、聞く、大きな声を出すといった、子ども時代に必要な実体験が奪われていますね。タブレットが教えてくれるなら、先生も要らないという発想につながりかねません。

 

金子 「タブレットの中に築山があって、メタバースの私が築山を登る」みたいな世界ですね。

 

池田 「昔は築山があったんだよ」と言われる時代が来るかもしれません。リアルな体験が失われていくことが心配です。

 

とば このような学校が子どもたちにとって行きたいと思える場所になるか疑問です。さいたま市は子どもを無視した計画を率先して進めています。私たちは子どもの立場に立って、子どもを守り育てる教育を、と求めていかなければなりません。教育委員会には子どもの視点を忘れずに行政を進めてほしいと、議会でも求めていきましょう。

戦後80周年 市の平和推進事業に期待

市の担当課と懇談するさいたま市平和委員会のみなさんと金子、池田の両市議

今年は戦後80周年、広島・長崎での被爆80周年という年になります。また、昨年日本被団協がノーベル平和賞を受賞、核兵器廃絶に向けた機運が大きくなっています。毎年この問題で市との懇談を続けてきたさいたま市平和委員会のみなさんが、4月25日に市の担当部署である総務局総務課と懇談をおこない、池田めぐみ、金子あきよの両市議が参加しました。

 

今年度、平和推進事業の予算が2.5倍と増額されたことを参加者のみなさんも歓迎。とくに初のとりくみとなる、広島平和式典への子どもたちの参加に期待の声があがりました。市内在住の中学生世代の方10人程度を募集し、総務課や教育委員会職員が同行します。各区から派遣できるようにして、地元で経験を広げてほしい、との要望が出されました。その他の平和推進事業として、例年おこなっている平和図画ポスターコンクールを「平和展」として規模を拡大すること、「こどもフォトコンテスト~平和を感じた瞬間」を実施することも予定されており、作品募集が始まっています。8月には講演会、コンサートなどを企画。「ぜひ被団協から講師を招いて」と参加者から要望が出されました。

 

金子市議は「平和推進事業の拡大は市議団としても求め続けてきたこと。市民の要望を受け止め、戦後80年にふさわしいとりくみとしてほしいし、今後もさらに発展させていくことが大切。さいたま市から平和と核廃絶の発信を続けていけるよう、私たちもとりくんでいきたい」と話しました。

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